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魅力に取りつかれてしまったのです。
スペイン系の人たちがよく使う言葉に「ミカサ・エストゥカサ」があります。これは私の家はあなたの家、いつでも訪ねていらっしゃいということです。私は早速その翌年の3月にマイアミを訪ねました。そこでホームレスの人たちのお手伝いをしているボランティア、低所得者の地域で子どもたちが互いに頑張って家庭教師をしているプログラム等を見せてもらい、ますますタイムダラーの魅力に取りつかれてしまったわけです。
その後、「長寿社会を考える研究会」という、9割の元気なお年寄りが社会にどのように貢献できるのか、また退職後のお年寄りが生き生きと暮らせる街づくり等について研究している会ですが、その会の研究として関前村に行きました。関前村は人口1000人の村ですが、高齢比率は40%と第2位に高いところです。人口1000人のうち400人は65歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんです。島へ行きますと、歩いているのはお年寄りだけ、というような島なのですが、皆さんとても元気で、全然高齢社会でどうしようなどという心配はしていないのです。見ると聞くとでは全然違うなと思いましたが、島の若い人たちと「朝までトーク」ということでいろいろざっくばらんにお話をしました。若い人たちが言うには「この島には異世代間の会話がないんです」と。若者にとっては「ここはとっても住みにくい島。年寄りが威張っていて、私たちは小さくなっていなくてはいけない」ということを聞きました。
そこで私が考えたのは“もしかしてこの島にタイムダラーを取り入れれば、お年寄りと若い人たちの異世代交流が出来るのでは”ということでした。というのもマイアミにあるユースクラブでは小学生、中学生、高校生、大学生、それから一般、働いている人達、お年寄りが大きい紺を組んで、お互いがお互いを助け合っているプログラムがあるのです。その中から異世代間のコミュニケーションもでき、共同体が生まれていました。
そこで私は夢を描きました。何とかしてエドガー・カーン博士(タイムダラーの創始者)とアナ・ミヤレスさんをこの島に連れて来たいと考えました。田中さん等にもいろいろアイディアをいただき、社会福祉医療事業団で民間の創意工夫を活かした先駆的な事業に対して助成を行っていることを知りました。そこで助成金申請の企画書を書きました。先程アナさんが述べたように関前村にもたらされるメリットというのをいっぱい書きました。。私は企画会社に勤めていますので、そういった企画を大げさに書くのはとっても得意です。嬉しいことに助成金をいただき、「超過疎の島でのボランティア事業」が誕生しました。
まず、エドガー・カーン博士を呼んで、タイムダラーというのは一体どういう過程で出来たかということを話していただくために8月に関前村に泊まっていただき、島の人たちといろいろ話していただきました。
次に、その哲学だけでは行動に移れませんから、9月にはマイアミで活動をしているアナ・ミヤレスさんに来ていただき、タイムダラーを実践するにあたってのポイントを話していただきました。
その後関前村では10人でこのタイムダラーを始めました。まず、タイムダラーは英語の名前で言いにくいので、自分たちで名前をつけることにしました。関前村にふさわしいものを自分たちできちんとやっていきたいので、「グループだんだん」という名前にしました。“だんだん”というのは伊予弁でありがとうという意味です。関前村にはみかん山

 

 

 

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